血栓溶解療法(t-PA療法)

血栓溶解療法(t-PA療法)

2014/05/19更新

 血栓溶解療法(t-PA療法)とは、t-PAという薬を投与して、脳内の血管にできた血栓を溶かす治療方法です。
 ただし、脳梗塞が起こってから4時間半以内に実施しないといけません。
 とにかく、脳梗塞の前兆が現れ、脳梗塞のチェックをしてみて脳梗塞の疑いがあるようなら直ぐに救急車を呼びましょう。早ければ早いほど、治療できる可能性が高まります。

 

血栓溶解療法(t-PA療法)が効く仕組み

 動脈硬化で狭くなった脳の血管に血栓が詰まるとそこから先に血液が行かなくなり、脳梗塞に陥ってしまいます。そこにt-PAを投与して血栓を溶かすことができると、血流が再開します。そうすると脳梗塞が起こらなくなったり、梗塞の範囲が小さくなったりします。
 血栓を溶かす薬はt-PA登場以前より存在していました。しかしそれらは病変部以外にも作用してしまうため、出血を起こしてしまうことが多いのが問題でした。t-PAはtissue plasminogen activatorの略です。プラスミノーゲンという分子をプラスミンへと変化させることで、フィブリンという血栓に多く含まれる成分を分解します。このようにt-PAはフィブリンに特異的に結合するので、他の組織への影響が少なくなります。

 

血栓溶解療法(t-PA療法)の投与の仕方

 t-PAは腕などの静脈から点滴をして投与する薬です。

 

血栓溶解療法(t-PA療法)の実例

 血栓溶解療法(t-PA療法)で劇的に回復した実例があります。

  1. 脳梗塞発症後1分で病院の検査を受けた。(病院の目の前で倒れたそうです。不幸中の幸いです。)
  2. 右まひと失語症があったので、頭のCTとMRIを撮ったところ、詰まっている血管を発見した。
  3. t-PAを打ったところ、血栓が溶けて、一週間くらいで全く後遺症なく退院できた。

 

血栓溶解療法(t-PA療法)を適用できる条件
  • 発症から4時間半以内に投与できる
  • CTやMRI検査で脳梗塞の変化がないか、ごくわずかである
  • 脳神経外科や神経内科の専門医が診察し、t-PAの使用が適切であると判断している

 発症後4時間半以内に投与ですから、実際には診察や検査などに1時間はかかるので、発症後3時間半以内には病院に到着していないといけません。
 発症後4時間半以上たってからt-PAを使うと、脳出血を引き起こす可能性が高いため、投与が禁じられています。脳組織がもろくなっているので、そこに血流を再開させてしまうと出血の可能性が高いのです。

 

血栓溶解療法(t-PA療法)ができないケース

 発症後4時間半以内の投与が可能だとしても、次のような方は治療ができません。t-PA投与時に脳出血する可能性が高いからです。

  • 脳出血・脳梗塞を経験
  • 梗塞範囲が広い
  • 最近大手術をした
  • 出血しやすい体質(血小板が少ない、重篤な肝臓病がある、ワーファリンを使用している)
  • 血圧管理ができていない(高血圧である)

 

血栓溶解療法(t-PA療法)利用の実際は?

 残念ながら脳梗塞発症事例の1割弱くらいしかt-PAの利用に至っていません。その理由の多くは、病院に行くのが遅いというものです。脳梗塞が発症から病院に行くまでの平均は、10時間といわれています。「明日行こうかな」ではもう遅いです。前兆が現れたら、即、救急車を呼んでください。

 

病院に行くのが遅れてしまう要因
  • 症状に気づかない
  • 様子を見てしまう
  • マイカーで近くの病院に行き、そこから専門病院に転送されることによるタイムロス(救急車なら最初から専門病院が選ばれます

 脳梗塞の前兆が現れたら、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。

 

血栓除去療法

 t-PA治療が受けられない場合の手立てとして、血栓除去療法という外科手術があります。血管から直接血栓を取り除く治療法です。
 マイクロカテーテルという細い管を用いて、血管中の血栓を取り除きます。ただし、大変高度な技術なので、できる施設は限られています。

 

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