脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作(TIA)」
2014/05/19更新
脳梗塞の前兆は一過性脳虚血発作、略してTIA(Transient Ischemic Attack)と呼ばれています。
脳梗塞を起こす人の2割~3割は一過性脳虚血発作があるといわれています。一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告発作ともいえます。一過性脳虚血発作を知って脳梗塞の早期発見につなげましょう。
一過性脳虚血発作が起こる仕組み
脳梗塞は脳の血管が血栓でつまって元に戻らず、その先の脳の部分が壊死に陥り、重い症状が現れるというものです。
一方、一過性脳虚血発作は、脳の血管が血栓でつまりますが、短時間のうちに血栓がとけて流れて、血流が再開するために、脳梗塞の症状が一過性のものに済んでいるわけです。
一過性脳虚血発作の症状
一過性脳虚血発作の症状は、「顔・腕・言葉」に現れます。
顔
- 片側が動かない
- 片目が見えない
- 物が二重に見える
腕
- 片方の手足が動かない
- 片方の手足がしびれる
言葉
- 言葉がでない
- 人の話が理解出来ない
- ろれつが回らない
一過性脳虚血発作は「一過性」の名が示す通り、一時的に起こる脳障害で、数分から2、3時間で症状が取れてしまいます。
しかし、絶対に、安心してはいけません。
一過性脳虚血発作は「脳梗塞の前兆」
一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆です。近いうちに脳梗塞を発症する可能性が高くあります。
一過性脳虚血発作を起こした人は、3ヶ月以内に約2割の人が脳梗塞を発症します。そして、そのうちの約半数の人は2日以内に発症しています。一過性脳虚血発作を起こした直後ほど脳梗塞を起こす危険性が高いのです。
一過性脳虚血発作の発症の例
一過性脳虚血発作を放っておいたせいで脳梗塞を発症してしまうケースが大変多く見られます。その一例を紹介します。
高血圧と糖尿病を持つある人が、昼食中に片腕が急にしびれ、箸を落としてしまいます。でも、10分くらいで元に戻ったので、大したことないだろうと放置してしまいました。しかし、翌朝、目が覚めると片方の手と足が麻痺して起き上がれません。家族を呼ぼうとしてもうまくしゃべれません。異変に気づいた家族によって病院に運ばれ、脳梗塞と診断されました。一命はとりとめたものの、重い後遺症がのこってしまいました。もし、昼食で異常が現れた時に病院に行っていたら、全く違う結果になっていたかもしれません。
一過性脳虚血発作の症状が現れたら
一過性脳虚血発作の症状が現れたらすぐ救急車を呼んで専門病院へ。救急車の救急隊員にはTIAの症状が現れたと伝えましょう。
早期発見・早期治療があなたを救います。脳梗塞を早期発見できれば血栓溶解療法(t-PA療法)を受けられる可能性があります。
夜間に起こった場合でも、翌朝まで様子を見たりせずに、すぐに救急車を呼びましょう。
一過性脳虚血発作の検査、治療
一過性脳虚血発作で病院に運ばれると、大多数の人は緊急入院することになります。一過性脳虚血発作の直後に適切に治療を開始できれば、脳梗塞になる確率を約80%減少できるというデータもあります。
病院では次のような検査を行います。
MRI検査
脳の状態を画像に映しだします。一過性脳虚血発作を起こした人は、すでに小さな脳梗塞があるケースもあります。その場合は緊急治療が必要になります。
頸動脈エコー検査
頸動脈(首の動脈)を映しだし、動脈硬化による頸動脈狭窄がないか調べます。頸動脈狭窄が起こっていると、そこにあるプラークが剥がれ血栓となり血管を詰まらせ、脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こしてしまいます。
頸動脈狭窄の治療
頸動脈狭窄の治療ではまず薬物治療を行います。血液をサラサラにする抗血小板薬や動脈硬化の進行を遅らせるスタチンを使用します。
それでも一過性脳虚血発作が改善しない場合は、手術を行います。また、プラークが剥がれやすい状態の場合は、薬物治療ではなく最初から手術をする場合もあります。
手術は、最も効果的である内膜剥離術という、頸動脈を切り開いてプラークを取り除く手術が行われます。しかし最近では、ステント治療というカテーテルからステントという金属を留置することで血管を広げる手術も行われます。
一過性脳虚血発作の予防
一過性脳虚血発作の危険因子には次のようなものがあります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心房細動
- 慢性腎臓病
- 喫煙
- 過度の飲酒
- メタボリックシンドローム
基本的には脳梗塞の危険因子と同じです。
予防としては、心臓の病気があればその治療をしたり、高血圧の対策をしたりします。
生活習慣病があれば、その改善のために食事療法や運動療法、薬物療法を行ったりします。